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校長ブログ

素顔の泣き笑い

2020/08/02

 今、先月から連載の始まった『らんたん』(小学館 qui-la-la (きらら) 7月号~)を楽しみに読んでいます。著者は卒業生で教え子の柚木麻子(ゆずき あさこ)さん。彼女が作家として活躍し、また後輩のために文芸クラブのコーチを引き受けてくれていることも、恵泉関係者にとって大きな喜びです。特に今回の連載は創立者、河井 道先生のことが題材です。柚木さんは学園史料室に通って河井先生について調べ、構想を温めていたとのこと。読み始めるとすぐ、河井先生や新渡戸稲造先生が今、目の前で話をしているように感じられるのが彼女の作品の醍醐味です。河井先生に直接教えを受けた卒業生からは、河井先生のお人柄や恵泉での日々を大切に振り返るお話を伺うことが多いです。『らんたん』の続きも楽しみにしています。

 昨日私が初めて担任した生徒から、久々に電話をもらいました。どれだけ年月が経っても、私の中に浮かぶのは中学1年生の時の彼女の人懐っこい笑顔です。新米教員の私でしたが、生徒と一緒に行う礼拝、英語の授業、行事など、何もかも楽しかった思い出です。生徒達によって、教員としての私もこれまで育てられてきました。私自身も恵泉の中高で学びましたが、友人のこと、勉強のこと、将来のことなど、その時々で真剣に考え、悩んでもいました。その泣き笑いの一コマひとコマが、私の人生のかけがえのないページとなっています。

 11月3日の恵泉デーには毎年たくさんの卒業生が訪ねてくれます。たった1日の開催で7,000名の来場者を迎えることも珍しくありません。多くの卒業生が懐かしみ、大切にするものとはいったい何でしょうか。それは、恵泉での日々に共に悩み、泣き、笑い合った素顔の自分と仲間が存在したという事実です。自分自身の人生の核となるような、素顔の自分の気づき、思いを生涯大事にしていきたいものです。そして時代がどのように動いていくとしても、自分の目指す方向を見失わず、後押ししていてくださる神様の風をしっかり帆に受けて進んでいきましょう。

 讃美歌302番 み神の風をば 帆にはらみて、今日しもわが舟 いでゆくなり、
       さからう風にも おおなみにも、みたすけ仰ぎて いとやすけく。