校長ブログ
恵泉らしさ
ようやく学園に生徒の声が溢れ、日常の生活が少しずつ戻ってきました。まだ、分級で移動した場所の除菌作業など、以前とは違った生活様式に気を遣う日々です。マスク着用が必須のため、皆の表情が表に出にくいですが、学園に集う一人ひとりにとって、そこが安心して心を開放し、共に学ぶ楽しさを分かち合う場所になるよう、教職員一同祈りながら日々を過ごしています。
最近雑誌の取材などで、恵泉の同窓生である私に対して、昔も今も変わらない「恵泉らしさ」について訊ねられることがあります。そんな時私は、一人ひとりが「自分を持っていること」と答えます。
恵泉には創立当初から、礼拝の中で述べる「感話」があります。自分が心から大切にしたいと感じることや、自分の考えについて、自ら言葉を選んで文章に纏めます。一年生の初めは原稿用紙三枚程度から始めて、六年生になる頃には七~八枚の長さで自分の思いを書き連ねる者もいます。クラス礼拝の中での友人の感話から、普段の行動からは知り得なかったその人の深層世界に触れる機会があります。また毎週の生徒礼拝で三年生や六年生の感話を聞き、教員である私達もその思索の奥深さに引き込まれることが度々あります。語る者が真剣に自分の内面を開放しようとする姿勢と聴衆との間には、絶対的な信頼関係が介在し、互いの価値観を享受し合う静思の時が共有されます。この6年間の営みの中で互いを尊重し、自分らしさを追求する成長の道筋が、恵泉教育の特長と言えるでしょう。
このコロナ禍だけでなく、先の見通せないこれからの社会を活き活きと生きていくには、しっかりと自分の頭で考え、常に自分の立ち位置を確認し、周囲と協働しつつ自分らしさを発揮しながら生きていくことが大切です。恵泉では常に、「あなたはどう思うの」と自身の考えを問われ、その判断と行動に責任を持つように迫られます。それこそが主体的に自己を生きる姿勢に繋がります。そしてその主体的な自己は、独善的な自己肯定ではなく、常に他者の価値観を受け入れることを前提としたものであるはずです。
創立者の河井 道先生は「汝の光を輝かせ」という言葉を残され、今も毎年卒業時に学燈からの灯を携えて送り出される恵泉生は、いつの時代もどこにあっても、自分の中に点された灯を掲げ、周囲にその光を分かち合うことを求められています。現在学園に集う一人ひとりも、他者と共に生きる中で「自分らしさ」を探し求める歩みを一歩一歩進めて参りましょう。