校長ブログ
オリエンテーションキャンプ(4年生)開会礼拝
2018年 4年オリエンテーション開会礼拝 2018/04/20
讃美歌 197,148
賛美 In His Time
聖書 フィリピの信徒への手紙2章13節から15節、1章6節
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高校生活を始めるに当たり、気持ちを切り替えて新しく出発するためのオリエンテーションキャンプが始まります。オリエンテーションとは、「方向性を示す」という言葉からきています。
4年生の学年目標は「拓く」です。「拓く」とは、「未開の土地を切りひらく、今までなかったことを始める」という意味があります。「拓」は、てへんにつくりが石となっています。手で石を押しのけ、動かし、目標に向かって突き進む、ダイナミックで汗をかく覚悟のいる行動だと思います。
人間がつくったもので地球から最も遠くにある物体は、何だと思いますか?前人未到の宇宙を今も切り拓いている物体があるのです。
惑星探査機ボイジャー1号です。1977年にアメリカのNASAによって打ち上げられた人工衛星です。現在は地球から最も遠くに到達した人工物として、太陽から200億km、地球と太陽との距離の130倍の遠いところを太陽系以外の天体に向かって飛行を続けています。
このような宇宙探査機が宇宙空間を飛行する技術に、スイングバイ(swing-by)があります。スイングバイは、目的の宇宙探査機を、大きな天体のそばを通過させ、その天体の万有引力で運動方向を変更したり、加速するための今では定番になっている人工衛星制御技術です。ボイジャー1号は、木星や土星を利用してスイングバイを行い、太陽系を離脱するという途方もないエネルギーが与えられ、驚くほどの遠くまでの飛行が可能になったのです。
ボイジャー1号は、人間が作りましたが、あなたがたは、神様がお創りになりました。
神様は、ある事柄をきっかけとして、その人の人生を急展開させたり、生き方に方向性をもたせたり、勢いをつけたりすることができるのです。
あなたのスイングバイは、これからの人との出会い、学校行事、信和会活動、クラブ活動、興味を持った勉強となることも十分考えられます。
河井道先生の「わたしのランターン」から、河井先生が受けたスイングバイを「わたしのランターン」から探してみましょう。
第1章「彼岸ざくら」p17には、村に住職がいなくなったときに、村人が集まって尼さんの梅香さんを呼び寄せるかどうかの会話が書かれています。
「『でもな、あの人は女じゃあないかね』と、もう一人が言った。
『男でも女でもかまうことはない、徳があって慈悲をわきまえたお人ならな』」
当時は、男尊女卑の世界でした。しかし、大切なことは、男か女ではなく、社会的なしきたりや風習ではなく、人格を持った人間が尊重され、その人が必要とされている場所で人々に役目をなすという梅香さんのような生き方です。このことが「わたしのランターン」の初めに書かれているのは、河井先生がこのような生き方を心に留めておられたということではないでしょうか。河井先生がしきたりにとらわれない男女平等という新しい生き方を拓いたのです。
河井先生11歳のとき北海道に移り住み、スミス女学校第一期生となります。スミス先生との出会いがあります。スミス先生は、河井道先生の可能性を引き出したばかりではなく、キリスト教による教育者としての模範となったのです。第3章「北海道での生活」p67には、内気な少女が学ぶことの楽しい快活な少女に変わっていくエピソードが書かれています。河井先生が教育者の夢を拓いた始まりです。
札幌農学校の教授であった新渡戸稲造は、河井道先生に歴史の勉強を教えています。この時、河井先生は15歳です。新渡戸は、河井先生の生涯の師となります。後に、河井先生にアメリカ留学を勧め、一緒にアメリカまで連れて行くのです。新渡戸稲造によって河井先生は、国際人としての歩みを拓いていったのです。
第13章「光を仰いで」p235です。1921年河井先生43歳の時、スイスで開かれたYWCAの大会に参加して、感動的な場面に出会います。第一次世界大戦後の荒涼とした社会に生き、戦争の悲惨さに傷つきながらもその苦しさに打ち勝って友好を回復する女性を目のあたりに見ます。「その場所は神聖な場所となった。わたしはそっと、二人をおいて立ち去った。」と書かれています。河井先生は、「戦争は、女性が世界情勢に関心を持つまでは決してやまないであろう。」「それなら、若い人たちから―それも、少女たちからはじめることである。」と深く洞察するのでした。そして、国際会議でのこの二人の女性の振る舞いによって、平和をつくる生徒を育てる学校の創立を拓いていこうと決心したのです。
新4年生の皆さん、神様はあなたを生かそうとするスイングバイを用意なさっています。それにアンテナを向けながら、神様の力を信じてあなたの宇宙を拓いていきましょう。