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校長ブログ

高等学校第70回卒業式 式のことば(2018/03/14)

2018/03/15

花束と地球儀

東門に咲くモモ

聖書

イザヤ書30章21節 
「あなたの耳は、背後から語られる言葉を聞く。「これが行くべき道だ、ここを歩け/右に行け、左に行け」と。」

ヨハネの手紙14章6節
イエスは言われた。「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。」
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恵泉の主イエス・キリストに感謝し、御名を賛美いたします。188名の卒業生のみなさん御卒業おめでとうございます。保護者の皆様、お嬢様の卒業を心よりお慶び申し上げます。また、御来賓の方々この喜びの日に、共にご証人となって下さり感謝申し上げます。

6年生、最後の宿泊行事「修養会」のテーマは、「羅針盤」でした。「羅針盤」は、磁石を用いて、方位を測る計器のことです。6年生の考えた「羅針盤」は地理的な方位を測るのではなく、過去から未来への時間を軸として、自分の歩みを振り返り、今の自分を見つめ、これからの自分のあるべき方向を見つけようとする意図が込められていました。それぞれ立候補した修養会委員が議論し、クラスに持ち帰り、再度話し合いをもちじっくりと検討し選んだ、すばらしいテーマでした。
 修養会は、昨年の夏休みが終わった8月30日から二泊三日、伊豆の天城山荘で行なわれました。ここは、1年生のフェロシップで訪れた場所です。
修養会の二日目、正午過ぎまで降っていた強い雨は、燭火礼拝の前には奇跡的に上がり、黙想の時間は、見上げると星々も見ることができました。暗闇の外の中で、一人になって30分、自分はどこからきて、今どこにいて、これからどこに行くのか、自分の心を見つめることができました。
 閉会礼拝で、学年代表の先生は、生徒の感話から引用なさり「羅針盤の示す経路が必ずしも目的地までの最短距離にはならないことがある」というお話をしてくださいました。私には、それがとても印象に残りました。

 ここに地球儀があります。地球の自転は、公転面に対して約66.6度ほど傾いています。そのため、地球儀は、いつも何かを考えているかのように思えます。 恵泉のある世田谷区船橋5丁目は、簡単に言うと、北緯36度(35.7)、東経140度(139.6)にあります。サンフランシスコは、北緯36度(37.8)、西経120度(122.4)にあります。緯度がほぼ同じですから、方位磁石の針を頼りに、経堂から真東に進むとサンフランシスコにたどり着きます。北緯36度の緯線に沿って行くのが、羅針盤のルートとなります。これを計算すると、恵泉とサンフランシスコの道のりは、約9000kmとなりました。一方、東京とサンフランシスコの地球表面上の直線距離は、8280kmです。2点の最短距離と羅針盤の示す距離は、羅針盤の示す距離のほうが約1割、700km余計に長いことになります。

 このような計算ができるのは、緯度と経度という絶対座標で決めているからです。絶対座標よって、地理的な情報の秩序が保たれています。日本やその他の国々が勝手に、自分たちの都合の良い尺度の相対座標を持ち込めば、グローバル化の世の中は、混乱を起こします。人生にも、神様を原点とする絶対座標と自分を中心とする相対座標があります。
 河井道先生の人生の歩みを振り返ると、河井先生は、ぶれることなく神様を中心とした絶対座標の中で歩んでいました。そして、恵泉女学園の創立までの道のりは決して最短距離の道のりではなく、神様の羅針盤に沿った紆余曲折した歩みだったのではないかと思います。

 今日の聖書の箇所に共通な言葉は、「道」です。羅針盤の指す目的地までのルートも「道」です。河井先生のお名前も道ですから、ここでは河井道先生を下の名前「道」先生でお呼びしましょう。道先生が恵泉女学園を創立なさった時までの神様の働きを3つご紹介します。

一つ目です。道先生は、10歳の時、一家そろって北海道に渡り、あるキリスト教主義の女学校に入ります。
 初めから道先生は、この学校に馴染むことができませんでした。外国人の先生に声を掛けられると、それだけで震え上がってしまいます。本を読むように名指しされるだけで、震えだし、知らないうちに泣き出してしまっていました。
 クラスで友達の裁縫箱が無くなったときは、上手く答えられずに、道先生が盗んだかのように疑われてしまいます。期待していた初めてのキリスト教学校での生活は精神的にとても辛い体験になりました。結局その学校を退学してしまいます。しかし、この経験が道先生の人生でどれほど益となったかは、計り知れません。「わたしのランターン」には、このように書かれています。
「わたしの学校で得た経験は、無駄ではなかった。わたしは食前の祈りもすれば、讃美歌もいくつか覚えた」。
 道先生は、与えられたこの試練の中で、聖書を読むこと、祈ること、讃美歌を歌うこと、というキリスト教信仰の土台を神様によって、培(つちか)われていたのです。絶対座標での歩みの始まりです。
 道先生が覚えた讃美歌の一つ、「いざいざためらうことなかれ」という讃美歌“Away! Away!”は、道先生が困難なことに出会うとき勇気を与える、まるで応援歌となります。
 次に入学したスミス女学校で、道先生はスミス先生と出会います。スミス先生は、道先生の中に素晴らしい才能を見つけます。Michi Kawaiの引っ込み思案が治れば、もっとみんなの前で活躍のできる人になる、とスミス先生は信じていました。英語の授業でナショナル・リーダーの第一巻を読んで下さいと言われたとき、誰も手を上げませんでしたが、何かが道先生に、あなたならきっとできる「勇気を出せ!」とささやきました。
 道先生は、読むことを促され、まるでスミス先生のように、自分でも驚くくらいにはっきり、読むことができました。道先生は、スミス先生にほめられ、ほめられることは、うれしいことだとわかりました。
 道先生は、生徒を褒め、生徒の才能を伸ばすこともお上手でした。道先生が教育の業を始めたいと思われたのは、この出来事にあったからだと私は思います。
 「勇気を出せ!」とささやいたのは、誰でしょうか。私は、神様だと確信します。今日の聖書、イザヤ書30章21節
「あなたの耳は、背後から語られる言葉を聞く。「これが行くべき道だ、ここを歩け/右に行け、左に行け」と。」
神様を中心とした絶対座標を歩む道先生への、神様の励ましの声です。

二つ目です。
 道先生は、スミス女学校で生涯の恩師、新渡戸稲造先生の授業を受けます。新渡戸先生は、道先生の学問に対する関心とアメリカ留学の希望を与えてくれました。アメリカ留学を果たし、それから、20年後、1921年、道先生44歳の時スイスで開かれたYWCAの大会に参加したときです。第一次世界大戦後の荒れたヨーロッパで戦争の悲惨さに傷つきながらそれに勝(まさ)って友好を回復するフランスとドイツの女性を目(ま)のあたりにします。
 「戦争は、女性が世界情勢に関心を持つまでは決してやまないであろう。」「それなら、若い人たちから-それも、少女たちからはじめることである。」と学校設立の決心を、道先生は固めます。少女の時から神様の声を内に感じ、平和をつくる神様の御心にそった、道先生の思いが、この言葉になったのです。

そして三つ目です。
 1926年、祈り求めていた学園創立のことをジュネーブ滞在の新渡戸先生に相談します。ところが一番信頼し、何でも相談して、助けてくださると信じていた新渡戸先生から、学校設立の思いは、反対されてしまいます。
 道先生にとってはかなり、ショックであったようです。この後、信仰の先輩植村環(うえむらたまき)をスコットランドのエディンバラに訪ねて
「私の切なる願いでもある、キリストの福音によって若い人々の心を培(つちか)う、わたしの学校を立てたいと思う」
と学校設立の熱い思いを述べたといいます。道先生を励ます信仰の友をイギリスに置いたのは、神様の深い御配慮です。そして、その後も新渡戸先生は、陰に陽に道先生を支えてくださいます。
 このとき、道先生に、力を与えてたのは、信仰の友と北海道に来て最初に入ったミッションスクールで、道先生が覚えたあの讃美歌、
 「いざいざためらうことなかれ」、”Away, away, not a moment to linger(いこう!いこう!ぐずぐずしていられない)“という曲と、祈りでした。
 御存知の通り恵泉女学園は、1929年に創立されました。道先生52歳のときです。10歳で北海道に渡ってから、42年の月日が経っていました。日本の悪い経済状況の中での奇跡的な出来事です。
 神様は、直線ではなく曲線を好むのです。しかし、この曲がりくねった歩みが神様にとっては、御心を行う直線の歩みなのです。

 卒業生のみなさんは、神様から選ばれ、愛され、あなたしかできない使命を託されています。その使命を果たすために、これから進学して学ぶのです。あなたに示されたあなた固有の道は、外から見ると曲がりくねっているかもしれません。しかし、その道はあなたしか歩むことができません。その時々に、神様の言葉は、ある時は厳しく、ある時はやさしく、語りかけてくださいます。
 さらに、素晴らしい御言葉をご卒業にお贈りします。ヨハネの手紙14章6節です。
 イエスは言われた。「わたしは道であり、真理であり、命である。わたしを通らなければ、だれも父のもとに行くことができない。」
 旧約時代はだれも、天の御父のもとに行く道を知らなかったのですが、御子イエス様が人として生まれ、イエス様ご自身が道であることを公に宣言なさいました。絶対座標の中に示された一筋の確かな道、それがイエス様ご自身なのです。いつでもイエス様を通して、父なる神様に祈り、自分の心の内をお伝えすることができるのです。そして、この世であなたが、神様からの働きを終えた時、あなたには永遠を御支配なさっている天のお父様のところに、凱旋することができるのです。ハレルヤ!
 恵泉女学園をお建てになった本当の創設者、イエス様がこれからのあなたの羅針盤となり、道となって、支え、導き、助けて下さるのです。あなたは、イエス様の光を内側から輝かせて歩むことができるのです。
 それでも、もし、人生のどこかで迷子になったら恵泉に戻ってきてください。恵泉女学園は、北緯36度、東経140度にあります。ここは、あなたの出発(たびだち)の原点、変わらない母校なのですから。