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感話

伝えるから、伝わるへ 5年 A.K.さん

2026/01/26

伝えるから、伝わるへ

5年 A.K.

 自分の意見を持たなければならない、と私はいつも思っていました。小学生のころから友人の意見ばかりに気持ちが、左右されていたからです。そのため、5年生になり、長い付き合いになった友人とお互いの意見を率直に言い合う中で、もやもやすることが増えました。友人とは口論まではいかないとしても、私の頭の中では友人の意見を消化しきれず、理解しあえないと感じる場面が多くなりました。結局、もやもやしたまま過ごし、時間が解決してくれるのを待つだけです。意見の違いに直面した時、私は友人の意見を深く理解する前に、友人としばらくの間距離を取ることもありました。

 改めて考えてみると、意見の違いに苦しむことは友人との間だけではありません。家族との会話の中でも同じようなことが起き得ます。ほかの人に干渉されるのが苦手な私にとって、母の意見を自分の中に落とし込むのが難しいと感じてきていました。特に高校生になってからは進路について考える機会が一段と増え、その分母と意見が衝突することも少なくありません。結局、母と衝突したときはその状況に向き合おうとせず、友人の場合と同様に、時間が経つのを待つだけでした。母は私よりもうんと長く生きている分経験をたくさん積んでいるので、母の考えの方が尊重されるべきものだと思いますが、どうしても受け入れることが難しいのです。その原因として、考えることが好きな私は将来の自分を想像し、ある程度自分の「モデル」を作ってしまうことが関係しているのではないかと思います。一方で、自分の「モデル」を作ったおかげで、私は将来の夢に悩んだことはほとんどありません。ですが、裏を返すと、私は型にはまった見方でしか捉えられず、思い込みや固定観念に縛られた人生にしてしまうのではないかと恐れています。個性と弱みは表裏一体という言葉がありますが、まさにこのことを指していると感じます。このような自分の考え方と向き合っていくうちに、新しく将来の夢が見えてきました。それは、外交官になることです。インターネットで外交官の仕事について調べてみると、外交官という職業についてまだまだ知らないことばかりだったので、冬休み中に、他校の高校生も参加する大使館訪問プログラムに参加しました。大使館を四つの中から選択することができたのですが、私はオランダ大使館を選びました。オランダ大使館を選んだ理由は、友人との意見の違いにもやもやしていた私には、日本とは異なる政策を採っているオランダについて知ることで、意見の違う相手との向き合い方の答えが見つかるのではないかと考えたからです。このプログラムは全国からの高校生が集まるもので、普段は関わることのない地域の高校生と話すことができた点も、とても印象に残っています。各県や各高校で行われている活動には大きな違いがありました。その違いとは、それぞれの地域で過去に起きた出来事や歴史が深く関わっているということです。同じ日本という枠組みの中にいながらも、まるで国をまたいで異なる国の人と話しているのではないかと感じるほどでした。話せば話すほど、新鮮な発見ばかりで、日本の中にも、多様な価値観や背景が存在しているのだと実感しました。実際に大使館を訪れ、私の中にあった「違う意見を持つ相手=(イコール)分かり合えない存在」という考えが変わりました。大使の方はオランダの立場を一方的に主張するのではなく、その体制になった背景を丁寧に説明してくださったのを鮮明に覚えています。そのような姿勢から、ただ「伝える」ことをするのではなく、「相手に伝わる」話し方を考えて、対話することが重要なのだと思いました。このことは、大使の方とお話している最中にも、実感したことです。事前に考えていた質問をグループの子が英語で質問した際、私たちが期待していた回答が得られない場面がありました。大使館訪問の前日に、伺いたい質問を日本語で考え、その質問をそのまま英語に翻訳したものでした。聞きたかった回答を得られなかったことよりも、なぜ英語が伝わらなかったのか、ということにショックを受けました。話し手自身が気にしていないような、ほんのわずかな言葉のニュアンスの違いが、相手との間で大きな認識のずれや関係のひずみを生む可能性をはらんでいるのだと気付きました。他言語話者と関わるときに限らず、母語が同じ人と話すときも同じことが言えます。今回得た気付きを今後の英語でのコミュニケーションだけでなく、日常の人間関係の中でも活かしていきたいです。

 他にも、大使の方に、私はこんな質問をしました。「意見が合致しない相手との対話の際に心がけていることは何ですか」と。すると、答えは、自分軸を持ったうえで相手の意見に同意はしないが、理解をするとのことでした。そうした対話の積み重ねが、無関心が無知を生むという状況を避けられるとも述べていました。オランダ大使の方が本題に入る前に、オランダの立場について時間を取って丁寧に話して下さったのは、意見が異なる相手と向き合うためには、まず理解してもらう努力が必要であるからだと感じました。相手と話す前に、対話が平行線にならないようにあらかじめ自分の中でシミュレーションを繰り返していく、これが良い対話につながるのではないかと思います。外交官という仕事は、自国の意見を推し進めていくのではなく、多角的に他国との関係を見直し、解決策を見出していく仕事なのだと、新たな発見も得られました。大使の方は私たちが大使館から帰る時、「平和を作るひとになってくださいね」とおっしゃって下さいました。

 大使館訪問プログラムで学んだことは数多くあるのですが、学んだことの中で一番驚いたのは、そこで話されていた考えや言葉をすでに何度も耳にしたことがあったということです。大使の方が帰り際に言われた「平和を作る人になってくださいね」という言葉は恵泉では平和を実現する女性になるという教育理念に重なり、オリエンテーションキャンプでは無知は無関心を生むことと同じ内容についてクラスメイトとディスカッションしました。平和を構築していく人として生きることや、価値観の違う相手にどう向き合うのか、そして無知は無関心を生むという考え方。これらは、特別な場所に行って学べることではなく、恵泉で当たり前に教えられてきたことであるのだと思います。また、オランダ大使の方が「伝える」よりも「伝わる」ことを意識するようにと言ったメッセージはこの感話にも通ずるところがあると考えています。感話はただ文章にするのではなく、聞き手のことを意識して書かなければいけません。感話を書いて読むというプロセスは自分自身の考えを振り返り、まとめるということに加え、溢れかえった言葉の中から一番良いものを取り出す難しさや大切さを学ぶ機会であると思います。同時に、私はこれまでの自分の姿勢を思い出しました。私はいつも、友人や家族に自分の悩みを打ち明ける時、相手からアドバイスをもらったとしても、大抵、自分の中で答えが決まってしまっています。そのため最終的には自分の考えに選択を委ねてしまいます。ですが、大使の「同意はしないが理解はする」という言葉から、自分の普段の姿勢を見直すことができました。今まで、友人との関わりの中で自分の中でどこか釈然とせず、相違に苦しむことが何度かありました。この悩みこそ、考えることをやめてはいけないサインなのだと思います。私たちの生活に浸透してきたAIは、私の考えに対して、すぐに回答してくれ、かつ否定的な表現を避けた上で、助言を示してくれます。おかげで私はわだかまりを抱くことはありません。なので、AIの回答を受け取り、考えることをやめてしまうことがほとんどです。考えることをやめてしまいそうな時、恵泉の感話は考えることのきっかけをもう一度作ってくれるのだと思います。感話が書ける回数も残り限られていますが、感話を書かなくなっても、感話で養った考えること、伝わるように話すことを大切にしたいです。

 この感話の中盤に私の将来の夢は外交官だと書きました。実は、この夢をまだ家族に伝えていません。この感話を書きながら学んだ「対話」にして、今日家に帰ったら家族に伝えようと思います。